2010/06/07

詩の本 / 谷川俊太郎


詩の本

谷川俊太郎さんの「詩の本」を読みました。人にプレゼントするつもりで買ってそのまま渡せないまま、家にずっとい続けていた本です。

贈る相手のことを想像し、「あぁこの人にならこの本がふさわしいかなぁ」と思って買ったものの、実は僕自身にとっていい本を選んでいたようです。読んで、素直によかったと思えました。

このブログには普段詩の本のことを書いたりはしませんが、今回は特別に。


一言説明
谷川俊太郎さんについては説明不要ですかね。国語の教科書に必ず載る日本を代表する詩人です。この「詩の本」は2009年に発行されました。
谷川俊太郎 - Wikipedia

ほぼ日刊イトイ新聞で「谷川俊太郎質問箱」というコーナーを今もずっと続けてらっしゃいます。こちらも、「あぁそんな風に考えるのか」とため息が出るような深い受け答えが書かれていて、勉強になります。
ほぼ日刊イトイ新聞 - 谷川俊太郎質問箱


感想
詩を読んだのは、5年ぶりくらいでした。詩からしばらく遠のいていましたが、この本をきっかけに、またちょくちょく読みたいなぁと思いました。

僕自身を5年前と見比べたら、考えたり、悩んだり、壁にぶつかったり、悔しい思いをしたり、気づいたり、うれしいことがあって喜んだり。そんなこんなで少しだけ人生経験が積めたかなと思うのですが、その甲斐あってかなくてか、前よりも詩が読めるようになった気がします。それがわかっただけでも、よかった。

年を取れば取った分だけ、詩を味わえるようになる。それだけでも、長生きを目指す理由としては十分です。がんばろ。

今回この本を読んで得た一番の発見が「詩人の何がすごいか」が少しわかったことです。もしかしたら初歩の初歩の気付きなのかもしれませんが、私にとっては大発見です。

それは、谷川さんのようなスゴイ詩人は「言葉ではなく、情景を描いている」ということです。スゴイ詩人は、言葉はひとつの表現手段として使っているだけであって、彼らが本当に創造しているのは言葉のその先にあるひとつの完成された世界観なんだな、と思いました。だから、ひとつの詩が引き締まっていて、ハリがある。そんな風に受けました。

また、この本の中には「ほかの誰かのことを思って書いた詩」がたくさんあります。こういうことができるってすごいなぁと素朴に思います。

中でもグッと来た詩を2編だけ一部抜粋します。

ただ生きる

立てなくなってはじめて学ぶ
立つことの複雑さ
立つことの不思議
重力のむごさ優しさ

支えられてはじめて気づく
一歩の重み 一歩の喜び
支えてくれる手のぬくみ
独りではないと知る安らぎ

ただ立っていること
ふるさとの星の上に
ただ歩くこと 陽をあびて
ただ生きること 今日を

(以下略)


来てくれる
河合隼雄さんに

私が本当に疲れて
生きることに疲れきって
空からも木からも人からも
眼を逸らすとき
あなたが来てくれる
いつもと同じ何食わぬ顔で
駄洒落をポケットに隠して

(中略)

私がもう言葉を使い果たしたとき
人間の饒舌と宇宙の沈黙のはざまで
ひとり途方に暮れるとき
あなたが来てくれる
言葉なく宇宙からの一陣の風のように
私たちの記憶の未来へと
あなたは来てくれる

2007年11月3日 戸隠にて

以前「less is more」、「真のシンプルさは洗練の末に生まれる」という言葉を聞いて、simplicityはひとりでに生まれるものではなく、高い技術と熟慮の結晶として初めて現れるものなんだな、ということを学びました。詩も、原理的にはそれと同じことが言えそうです。

最近詩から離れていましたが、たまには、良い詩を読むことにします。

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