2011/12/04

レコーディング・ダイエット 決定版 / 岡田斗司夫


レコーディング・ダイエット決定版」を読みました。

この本のテーマはずばり「レコーディング・ダイエット」! レコーディング・ダイエットとはこの本の著者・岡田斗司夫さんが提唱したダイエット手法で、おととしぐらいに大ブームを巻き起こしました。

この「決定版」は、そのブームがひと段落したころ、レコーディング・ダイエットを実践した著者自身の経過やよくある疑問に対する回答を織り交ぜ、レコーディング・ダイエットを改めて総括することを試みた一冊です。

私は、当時ブームの存在は知っていましたが、「また新たなダイエット手法が出てきたなぁ・・・」ぐらいの認識でスルーしてしまっていました。

が、これ、今読むと、実はものすごい本(手法)でした! というのは、まず、考え方が行動分析学(行動心理学)の理論と絶妙に合致している点。そして、にもかかわらず、理屈っぽくなく平易なことばでわかりやすく書かれている点。ダイエット本として読むのもありですが、私はむしろ行動分析学の応用事例本として読んだ方が楽しめました。

この世には
  • しっかりした理論に裏付けられたアドバイス。ただ、理屈としてはわかるけど、実質、実行できないもの。
  • わかりやすいアドバイス。わかりやすいけど、裏づけが怪しかったり大事な視点が欠如したりしていて、実行しても結局成功しないもの。
この2つのアドバイスはあふれるほどありますが、良いトコ取りをした「理論がしっかりしていて、かつ、わかりやすいもの」というのはごくマレです。そこをしっかり押さえられているのが本書です。

以下、エッセンスをまとめてみます。詳細は本書を読んでいただくとして、ここでは、レコーディング・ダイエットの定義特徴価値という大まかなところ3点を。


#1 レコーディング・ダイエットとは

レコーディングダイエットとは、「レコーディング」とその精度を高めるための「カロリー計算」、この2つを中心とした体系的なダイエットアプローチです。

レコーディングとはそのまま「記録」という意味で、そのときどき体重や食べたもの、摂取カロリーを時系列に記録していくことです。
レコーディング・ダイエットはこういう思考法の集合体だ。けっして「食事記録」や「カロリー制限」が本質ではない。
便宜上「レコーディング・ダイエット」という名前で呼ばれていますが、記録することそのものはこの思考法のほんの一部にすぎません。


#2 数あるダイエット手法のなかでのレコーディング・ダイエットの特徴

では、レコーディング・ダイエットの特徴とは何でしょうか。私なりのポイントは次の3点です。
  1. 感情と本能を重視
  2. プロセス思考
  3. 算数と栄養学

1. 感情と本能を重視
レコーディング・ダイエットでは、いかにラクに、いかにムリなく「ダイエットを続けられるようになるか」というところに最大の焦点をあてています。

要は「意志の力オンリーではなく知恵を使い、無意識も味方につけてダイエットを続けよう。ただし科学の知識も使って」と。その手段のひとつとして「記録」があるのであって、記録がすべてではありません。記録以外にも、ラクに続ける、自分の感情の部分を喜ばせるための工夫がだくさん詰まっています。

問題は「どうやって痩せるか」という方法じゃない。
どうすればダイエットをやめずに続けられるか」という、モチベーション維持が最大のポイントなのだ。
ダイエットとは辛くて我慢が必要な苦行ではない。レコーディング・ダイエットは「面白くてやりがいがあり、もっともお得な自己投資」なのだ。
誰もが間違えるのは、「ダイエットは意志力の問題」だと考えることだ。(中略)
ダイエットは、意志ではなく、知恵で乗り切るのだ
メモをするというのも、自分の無意識にむかって、手紙を書いているようなものだ
「痩せる」というゲームをしてる
要は、「ダイエットって、ほとんどの人が失敗するのは、続けても成功しないんじゃなくて、そもそも続けることができてないからだよね」という問題意識が原点にあります。

このあたり、習慣化全般に共通するところでもあります。

2. プロセス思考
ふたつめの特徴は、プロセス思考です。ダイエットにはいくつものフェーズがあり、フェーズごとに課題はちがうし、フェーズごとにやるべきことは違う。この認識が、レコーディング・ダイエットの大きなポイントです。

また、「体重が順調に変化するときもあれば停滞するときもある、でも、表面上停滞しているからといってダイエットが進行していないわけではない」という大きな視点も、レコーディング・ダイエットはもたらしてくれます。
「レコーディング・ダイエット」は、次のような段階を追って進める。
助走
離陸
上昇
巡航
再加速
軌道到達
月面着陸
月面リゾートでの生活
分りやすいように、飛行機を例にとった言い方にした。飛行機というのはおわかりの通り、巨大でなおかつ重たい乗り物だ。それが空を飛ぶ。浮かび上がるまではには、実はいくつかの段階をふまえている
ダイエットは、すべての値が均等に進むのではなく、また同じペースで減っていくのでもない(中略)
ダイエットは、すべての指標がシンクロして減少するのではない。むしろ、時間差をもって、順番に数値が減少していくのだ。(中略)
体重がなかなか減らないから、停滞期だとがっかりするのは早い。目に見えなくても、身体のなかでは次の段階に進むための準備がすすんでいるのだ。
人間の身体の変化は、一直線で進むものではないのだ。
これは、あらゆる成功への道のりについても言えることです。

3. 算数と栄養学
3つめのポイントが、算数と栄養学。つまり、科学的で客観的なダイエットの捉え方です。ダイエットのキホンは、脂肪のインプット、在庫、アウトプットをきちんと把握することです。つまり、摂取カロリーを計算して、基礎代謝も見積もって、目標状態と現状とのギャップを足し算、引き算の問題として埋めていく作業です。

このあたりのところも、きちんとモレなく押さえられています。
基礎代謝とは何か?
18~29歳の男性1550カロリー、女性1210カロリー
30~49歳の男性1500カロリー、女性1170カロリー
50~69歳の男性1350カロリー、女性1110カロリー

さらに、急激なダイエットが失敗する理由として人間の制御機能「ホメオスタシス」にも触れられています。このあたりもヌカリありません笑。
前にもいったが、1日の摂取カロリーを基礎代謝より低くしないこと。早く痩せたいからといって、1日1000カロリーといった無理をすると、必ず反動がくる。
(中略)人間の身体は、基礎代謝も満たされない状態が続くと、飢餓状態と勘違いして、頭は全身に必死でカロリーを取るよう命令する。そうなると、強烈な食欲がわいてくる。これに抵抗するのは至難の業だ。次には、強烈な脱力感やめまい、吐き気が起こる。
さらに、身体は摂取したカロリーを少しでも蓄えようとする。つまり、身体に脂肪として蓄積しようと、基礎代謝を落としてしまうのだ。


#3 レコーディング・ダイエットの価値

じゃあ、レコーディング・ダイエットをすると何がいいのか。価値という視点でいうと、大きなのは次の3点です。
  1. ラクにダイエットに成功する
  2. 身体に敏感になる
  3. 他にも応用可能な技術が身につく

1. ラクにダイエットに成功する
ダイエットがラクになる。これがレコーディング・ダイエットの一番の価値です。

ダイエットは短期戦ではありません。健康的な痩せ方(シェイプ)を目指すのなら、ダイエットは必ずや長期戦になります。その長期戦を意志の力だけで乗り切ったり、大事なロジックが抜け落ちた片手落ちな手法で突破したりするよりは、レコーディング・ダイエットを取り入れた方が断然よい結果をもたらすかと思います。

2. 身体に敏感になる
自分の身体が求めるもの、身体に必要なものに敏感になれる、というのが2つめの価値です。

人がダイエットをするとき、当面の目的は「適正体重になる」というところだと思いますが、その上位にあるもっと本質的な目的は「健康であること」や「自分の最大パフォーマンスをいつも発揮できるようなコンディション作り」です。

身体に敏感になることは、それらを達成するための必要条件です。「身体からのシグナルに気づく力」はシェイプがよいということ以上に、一生のかけがえのない宝となります。私は、自炊を始めてから、この意味が少しわかるような気がします。

3. 他にも応用可能な技術が身につく
3つめが、他にも応用可能だということ。上述のように、レコーディング・ダイエットは「記録」を中心とした体系的な考え方で、行動分析学の理論にも沿ったものです。このメソッドは他のさまざまな習慣化に応用することができます。

私たちは、ついつい「意志の力で行動を変えよう」と発想してしまう。
でも、実は効果があるのは「環境を変えることにより、行動を変える」ことだ
意志の力ではなく「環境によって行動を変える」。これなんて、まさに行動分析のABC分析ですね。

実は、自己コントロールができることは、体重管理だけに有効なのではない。お金や仕事、人間関係や自分の将来など、広範囲に応用可能である。
レコーディングはあなたという飛行機に、いつも位置や方角や速度を教えてくれる。悩みや迷い、それらから脱出するための計画やヒント、日々の思いをレコーディングすることこそ、人生を計器飛行することである
私自身が、レコーディングで得た成果もある。
いま現在の私の家は、まるでメイドさんがいるようにいつも掃除が行き届いてきれいな状態である。(中略)
いきなり掃除をしたり、きれい好きになろうと決心しても続かない。かわりに私は、自宅の精密な地図を作った。どこになにがあるのか、整理や掃除を我慢して、ひたすら地図を作った。つまりレコーディングしたわけだ。
すると、ゴミ屋敷に見えた自室にあふれていたモノたちが、実は「それなりの理由」で配置されていたことに気がついた。
この段階で、まだ片付けたいのを我慢した。その地図上だけで、再配置をひたすら考えた。(中略)
結果、部屋は劇的に片付いた。片付くどころか、掃除するのが当たり前になった。

空間やタスクの整理にも、レコーディング、無意識の活用という手法は使える、とのこと。このあたりの部分も取り入れていきたいです。


・・・以上です。示唆に富んだところが非常に多く、すべてを挙げ出すとキリがないくらいなので、このぐらいで。


一言感想

面白かったです。

読んでいる間、感動しっぱなしでした。長い年月をかけて発展してきた行動分析学の考え方と合致しているし、ダイエットを経験した人だからこそわかるジレンマ(インサイト)にもきちんと焦点があてられていて、ひとつひとつ納得しながら読むことができました。

個人的に思うのは、この考え方がブームで終わらず21世紀の定番へと変わってほしいなぁということ。

今は少しマシになったのかなとも思いますが、ものごとがうまく行かない場合に「がんばりが足りない」「意欲が足りない」とすぐに意志の問題だけに帰着させてしまう「意志の問題病」がこの世には蔓延しています。

実は、ちょっとのカガクとちょっとしたツールで、「苦しい努力」が「ハッピーな努力」に変わる場面はたくさんあると思います。レコーディング・ダイエットや行動分析学はそのひとつで、「意志の問題」だけで片づける狭いものの見方を拡げて、もっと大きな視点から世界を捉え直すことを可能にしてくれるものです。

類書の「脳が教える!1つの習慣」もおすすめです。「レコーディング・ダイエット」はダイエットがテーマですが、「脳が教えるたったひとつの習慣」は習慣全般をテーマにしていて、考え方は共通です。


最後に目次も。

目次
序章  レコーディング・ダイエットの世界へようこそ
第1章 助走期 「現実」を知る
第2章 離陸期 カロリー計算なんて怖くない
第3章 上昇期 目標値を決めて、食べ方を工夫しよう
第4章 巡航期 「75日目の反乱」をどう抑え込むか?
第5章 再加速期 胃袋からのサインを聞く
第6章 軌道到達期 ダイエットを意識しない
第7章 月面着陸期 「新たな自分」に生まれ変わる
終章  月面リゾートでの生活
あとがき


おまけ
著者の岡田斗司夫さんの公式サイトはこちら。
岡田斗司夫公式ウェブサイト
レコーディング・ダイエット2.0のススメ(更新停止中)
レコーディング・ダイエット以外の幅広い活動のようすも見ることができます。



ちなみにこちらはレコーディング・ダイエットブームの発端となった一冊です。

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