2012/09/27

NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法


NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法」を読みました。

原題は「Nonviolent Communication: A Language of Life」。

日本版タイトルの「NVC」はNonViolent Communicationの略で、いうなら「思いやりを最大限発揮するためのコミュニケーションの考え方」を表すことば。ガンジーの非暴力のコンセプトにならって著者がつけたものだそうです。

目次
第 1章 心の底から与える――非暴力コミュニケーションの核心
第 2章 思いやる気持ちを妨げるコミュニケーション
第 3章 評価をまじえずに観察する
第 4章 感情を見極め、表現する
第 5章 自分の感情に責任をもつ
第 6章 人生を豊かにするための要求
第 7章 共感をもって受け取る
第 8章 共感の力
第 9章 思いやりをもって自分自身とつながる
第10章 怒りをじゅうぶんに表現する
第11章 力を防御的に使う
第12章 自分を解放し、人に助言する
第13章 NVCで感謝を表現する

本書のテーマはずばり「コミュニケーション」。豊富な事例を挙げながら、一生使えるコミュニケーションの原則について解説してくれるすばらしい一冊です。

コミュニケーションという言葉の意味は非常に広いので、本書が言及しているコミュニケーションがそのどのあたりの話なのかといいますと・・・

コミュニケーションを大きく2つにわけると
他に何らかの目的があって、それを達成する手段として行うコミュニケーション
そのコミュニケーション自体を目的として行うコミュニケーション
という分け方ができるかと思います。

前者はたとえば、ビジネス上の営業活動やマーケティング活動、他部署との交流などで、後者だと、家族や友人との交流、ホスピスケアなどが挙げられるでしょうか。両者が大きく異なるのは、前者は、目的が達成できたかできないかという「成否の判断」がしやすいのに対し、後者はそういった成否の判定がしづらい点です。

はしょっていうなら、前者は「手段としてのコミュニケーション」、後者は「目的としてのコミュニケーション」。

もちろん、1と2はクッキリ分かれているわけではなくその境界はあいまいですが、本書でいう「コミュニケーション」をあえて分類するなら、後者の「目的としてのコミュニケーション」の方に入るかと思います。打算で行うのではなく、その過程自体を楽しみより深く人と接するという、そちらのコミュニケーションです。



この認識が著者と異なったまま本書を読むと、「いいコト言ってるけど、こんなことやっても何のメリットもないもんなぁ・・・」という感想を抱いてしまうことになるかもしれません。

そこを誤解しないで、著者のいうコミュニケーションの意味を正しく受け止めさえすれば(そして、そういうコミュニケーション能力を磨くことに興味があるなら)、ものすごくおもしろい本です。私は「ふだん無意識に行っているコミュニケーションについて改めて学ぶことなんてあるのかなぁ」とやや懐疑的な態度で読み始めたのですが、読んでるうちに引き込まれ、目からウロコがたくさん落ちました。

こんな方におすすめ
親しい人とのコミュニケーションをよりよくしたい
他人にも自分にももっと温かく接したい
ふだん家庭や職場で我慢することがよくある

ポイント

本書で語られるNonviolent Communicationのポイントをいくつかあげてみます。

#1 Nonviolent Communication(以下NVC)の定義
一言で言い表せる定義は本書の中には載っていませんでしたが、むりやり一言でいうなら

Nonviolent Communication
= 思いやりを最大限発揮し、相手も自分も満足するためのコミュニケーション


でしょうか。

本書内では次のように書かれています。
どのようにコミュニケーションをとれば、つまりどのように話をしたり聞いたりすれば、自分たちに本来そなわっている力――人を思いやろうとする気持ちを引き出せるのか、心の底から与えることができるのか、自分自身とそして相手と理解し合えるのかをさぐった。そうしてある方法にたどりついた。それを、「非暴力コミュニケーション」とわたしは呼ぶ。
NVCが基盤としているのは、過酷な状況に置かれてもなお人間らしくあり続けるための言葉とコミュニケーションのスキルである。(略)
具体的には、自分が表現し、他人の言葉に耳を傾ける方法を組み立て直す。型どおりに反射的に反応するのではなく、自分がいま何を観察しているのか、どう感じているのか、何を必要としているのかを把握したうえで、意識的な反応として言葉を発するようにする。人に対する尊敬と共感を保ちながら、自分自身を率直に明快に表現する。

#2 NVCの意義
NVCの意義は大きく2つあります。

ひとつは、対他人の視点で、身近な人ともっと深く理解し合い、より親しくなることができる、ということ。もうひとつは対自分の視点で、自分のことをより深く理解し受け入れることができる、そしてより穏やかになれる、というトコロ。

本書ではこのような記述があります。
NVCを使い、心の深いレベルで自分が何を必要としているのか、人が何を必要としているのかに耳を傾けると、相手との関係を新しい視点から理解できるようになる。
NVCを実践する場合、相手がNVCに通じている必要はない。また、心を通い合わせたいという気持ちが相手になくてもかまわない。こちらがNVCの原則に忠実であるかぎり、相手を思いやって与え、受け取ろうとするものであるかぎり、そしてそれ以外にめざすものは何ひとつないと相手に精一杯伝えるかぎり、相手もそのやりとりに参加して、やがては心を通い合わせるだろう。といっても、毎回これがすみやかに実現するなどというつもりはない。それでも、NVCの原則とプロセスを忠実に実践し続ければ、必ず、人を思いやる気持ちが花開くとわたしは信じている。
簡単じゃないけど、あきらめなければ必ずいつかは人と心を通い合わせることはできる!」――この信念がNVCの根底にあります。

#3 NVCの核となるフレームワーク
NVCの核となるのは、次のプロセス型フレームワークです。


要素は、観察感情ニーズ要求の4つ(本書内での言い回しは、観察、感情、必要としていること、要求です)。

すべてをここで解説はできないので、少しかいつまんでご紹介します。

私たちがディスコミュニケーションを生んだり、人とのやりとりの中でストレスを感じたりする原因のひとつは、混乱しているから。つまり、「何がどうなってそういう結果に至ったのか整理できず頭の中がごちゃごちゃになっているから」です。

たとえば、誰かが何か自分の気に食わないことをしたとき、ついつい怒ってしまう。それは、自分が「こうあるべき」「こうあってほしい」というニーズを持っており、それと現実がかい離したために起こる感情です。本来であれば、誰かが何かをした、という事実認識から直接負の感情が引き起こされることはないはずです。

そこには、事実ではなく「観察」、そして、「評価/判断」、「ニーズ」、「そもそもの価値観」というような諸要素が絡んでいます。しかし私たちはしばしば「事実→感情」とショートカットした部分だけを認識し、ほかの要素を見過ごしがちです。

そのあたりを適切にときほぐし、ひとつひとつつぶさに見ていこう(そしてそれをリアルタイムのコミュニケーションの中でできるようにしていこう)というのが、NVCの提案です。

#4 NVCを阻害するもの
NVCとは逆に、思いやりをムダにしたり、なくしたりしてしまう考え方というのも紹介されています。その中からいくつか挙げてみます。

  • 道徳を持ち出して人を批判する
  • 他人や偉人と自分を比較をする
  • 自分の行動や感情の責任を放棄し、「しなくてはならない」とあたかも自分には選択肢がないかのように考える
  • 自分の願望を他人に強要する
  • 「彼/彼女は○○(報酬や懲罰)に値する」という形で人を評価する

あああぁ。知らず知らずのうち無意識に批判したり比較してり、してしまってます。。このあたり、長く生きていると無意識でできてしまうのが怖いです。

・・・以上です。


感想

この本を読んで改めてコミュニケーションについて考えてみましたが、そういえば、大人になり歳を重ねてからつくづく思うようになったことのひとつが「コミュニケーションって終わりがないなぁ」ということ。

コミュニケーションはよくキャッチボールにたとえられたりしますが、ただボールを投げる、そしてキャッチする、ということであれば10歳かそこいらになれば大体はできるようになります。さらに、少し発展させたアクロバティックな変化球や背面キャッチなんかも、大人になるかならないかという頃にはある程度はできるようになります。

だけど、さらに進んで、「その場そのときに合った本当にベストなボールの投げ方をする」「ベストな受け方をする」というレベルを考えてみたとき、いまの私はとても「できてる!」とはいえません。。

これから時代が進んで、コミュニケーションの表面的なあり方はどんどん変わっていくかとは思いますが、思いをこめて人と触れ合うことや他人や世界と深いところで触れ合えたと感じられることが人生の醍醐味である、という点はこれからも長い歴史の中で変わることはないでしょう。

コミュニケーションの本質の部分をもっと理解し、もっと深く人と接し、自分を理解し、もっとずっと人生を楽しんでいきたい、と思わせてくれる本でした。おもしろいです。


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